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【世界のギフトマナー】国別 贈り物上手になるためのヒント by石橋眞知子【世界のギフトマナー】国別 贈り物上手になるためのヒント by石橋眞知子

ギフト文化は、各国の歴史や習慣とともに育まれるもの。 それだけに、ギフトにまつわるマナーにもお国柄が色濃く反映されます。 プロトコール(国際交流のルール)に精通する筆者が、ギフトの習慣やタブーを国別に解説します。

【台湾編】伝統の定番ギフトも、トレンドを反映 !?

日本人の多くが台湾を好み、大方の台湾人は日本が大好き。広い世界を見渡しても、こんなふうに相思相愛の近隣国はなかなか珍しいものです。私も台湾を訪れるたび、きちんと礼節をわきまえ、かいがいしく世話を焼いてくれる人々の姿に、日本人が忘れつつある本来のもてなし方を思い出します。日ごろから人間関係を大切にする台湾には、一体どんなギフト文化が根づいているのでしょう !?

【台湾編】伝統の定番ギフトも、トレンドを反映 !?
著者:石橋眞知子 / 編集:永岡綾 / イラスト:坂本朝香
*掲載情報は、著者の経験および独自のリサーチに基づくものです

Q. どんなときにギフトを贈る ?

中秋節は、バーベキューでお祝い

中華思想文化圏の台湾では、やはり中国と同じしきたりが生活のベースとなっています。「春節」(旧暦のお正月)、「端午節」(旧暦の5月5日)、そして「中秋節」(旧暦の8月15日)は「三大節」と呼ばれ、大きなイベントとしてお祝いをします。概ね中国と同じような祝い方なのですが、中秋節だけは全く違います。中秋節ギフトの定番はもちろん月餅(この月餅も、ここ数年でスタイルが変わってきています。詳しくはのちほど!)ですが、「烤肉(カオロウ)」というバーベキューで祝うのは、台湾ならでは。

鶏豚牛羊などの肉類以外に、魚介類、キノコ、野菜、練り物など、何でもありのバーベキュー。友人知人が集まって、家の中だけでなく、道路や公園、路地裏でも繰り広げられ、台湾の風物詩となっています。「なぜバーベキュー?」という問いを投げたら、台湾の友人が笑って答えてくれました。「焼き肉のタレかガスコンロか、どちらかの企業が1960年代にこのブームに火をつけたんですよ」。なるほど! 企業による仕掛けだったのですね。バレンタインデーにチョコレートを贈る習慣を確立した、日本のチョコレート会社と同じ策だったというわけです。

七夕は、恋人たちのギフトの日

恋人たち専用のギフトイベントとしては、「七夕」があげられます。日本では子ども中心の行事で、短冊に願いごとを書いたり、織姫と彦星が天の川で出会えるようにとテルテル坊主をぶら下げたり......。一方、台湾の七夕は「七夕情人節」、略して「情人節」と呼ぶのが一般的です。ちなみに「情人(チンレン)」とは恋人のこと。七夕には、男性が女性にギフトを贈り、レストランで食事を楽しむのが最も定番だそう。

七夕の数日前からブランドショップやジュエリーショップは男性客で混みはじめ、路上には花やチョコレートの特設店が現れて、レジの前では男性客が照れくさそうに順番待ちをしているそうです。「台湾では、どんなときも男性が女性に贈り物をするのが当たり前。彼の誕生日だけは特別だけどね」と打ち明けてくれた台湾女子。日本のバレンタイン事情を話したら、びっくりしていました。

Q. ギフト文化の特徴は?

人間関係を大切にする台湾の人々は、卒業、結婚、出産、引越し、誕生日のような人生の節目に当たるイベントでは、もちろんギフトを贈り合います。さらに、親戚宅や友人宅を訪れるときなど、普段から手土産を忘れません。ちょっとした気遣いがつきあいの原動力になるようですね。

そんな手土産上手な台湾の人には何を贈ればいいのでしょう? この夏、台湾の知人宅を訪れるときに、台湾通の友人からアドバイスを受けました。「日本で人気が高く、台湾では流通していないものが喜ばれるわ」とのこと。それでいてスーツケースに収まりよく、軽くて運ぶのがラクで、日本らしいものがいい......と思い悩んで一週間。結局、老舗和菓子店の季節限定の詰め合わせを持参することにしました。

箱を開けた途端、知人の顔に笑顔が広がるのを見てほっと一安心。台湾にはギフトはもらったその場では開けない習わしがあると聞いていましたが、私の前で包装紙をビリッと破って「ああ、おいしそう!」と言ってくれた30代の夫婦を見て、世代によってギフトを受け取るスタイルも変わってきたのだなと思いました。

Q. ギフト選びのポイントは?

現地の情報によれば、台湾で人気のあるギフトは「携帯電話、パソコン、デジカメなどのデジタル製品」、「洋服、靴、バッグ、アクセサリーなどの服飾品」、「人気ショップやレストランで使えるクーポン券」、「旅行券」などだそう。どうやら、ロマンティックな商品よりも、実益のあるものを好む傾向にあるようですね。海外で人気のもの、話題性のあるもの、実用性の高いものなどを選ぶと喜ばれるかもしれません。

Q. 気をつけたいギフトのマナー&タブーは?

発音には要注意

台湾には中国と同様のタブーがあり、不吉な言葉と同じ発音のものは忌み嫌われます。いくつか代表的なものをあげておきまよう。

傘と扇子(サァン)】
「散(サァン)」と発音が似ており、散る、つまり「別れる」という意味があるのでNG。日本で夏の贈り物に選びがちな扇子は要注意です。

時計(ズォン)】
ここで指すのは、腕時計ではなく置時計です。「終(ズォン)」と発音が同じため、「鐘」を贈ることは、台湾では「死」を贈る、の意に。相手の死を望む「死ね」という意味に取られてしまい、大変なことになります。

風鈴(フォンリン)】
「分離(フンリィ)」、つまり別れるという言葉に発音が似ているのでご法度。その上、風鈴の音はこの世のものではないものを招き寄せるという説も。風鈴が好きで風鈴市まである日本とは大違いですね。

(シェイ)】
「邪鬼・邪魔・邪気・風邪」に含まれる「邪(シェイ)」と発音が同じで、邪は「有害」を意味します。また、好きな相手に靴を贈るのは厳禁。「その靴を履いて遠くへ行ってください」という意味になります。

(リ)】
「離(リ)」、すなわち別れという言葉と発音が同じため、タブーとされます。

日本と似たタブー&真逆のタブー

ほかにも、そのものが持つイメージからの連想などで、ギフトとしては避けられるアイテムがあります。まずはハサミ、ナイフ、包丁などの刃物はNG。切る=関係を絶ち切る、という意味があるので控えましょう。
これは日本と似ていますね。また、ハンカチやタオルはお葬式の香典返しに配る習慣があるため、永遠の別れや涙を連想するものとして嫌われます。日本での白いハンカチと同じですね。お葬式ということで言えば、菊の花は、日本と同じく葬儀に使われるため贈り物には向きません

ちょっと変わったところでは、緑の帽子を被った男は「妻に寝取られた男」を指します。これは中国でも同じ。明の時代に「不貞を働いた妻を持つ男は緑色の帽子をかぶらなければいけない」という法律があったためと言われています。そこで、緑の服飾品を男性に贈るのは控えたほうが無難です。

最後に、数字にも気を配る必要があります。奇数は不幸の兆しとして受け取られてしまいますから、複数贈る場合は偶数にする習慣があります。特に結婚式では避けましょう。ご祝儀を奇数にする日本とは逆なので、気をつけなければなりませんね。

Q. ラッピングはどうしたらいい?

台湾では、おめでたいときのラッピングは赤や金色が主体です。一般的に、ピンクや黄色など、カラフルな包装やかわいいらしいパッケージが目につきます。「死」や「邪悪」の意味を持つ黒や白は、包装紙には使いません。最近では、デザインのよしあしだけでなく、環境にやさしい素材や、再利用できそうなものが好まれるようです。

Q. 最近のギフトトレンドは?

中秋節に食す月餅は、いまや多彩なバリエーションに富んでいます。ずっしりとした中国月餅と違い、台湾の月餅はもともとパイ生地を使った軽い触感が特徴。ここのところ、ヘルシーブームが台頭してきて、さらに軽い低カロリー月餅が女性の間で人気を呼んでいるとか。

他方、欧米発の飲食店が月餅商戦を見逃すはずがありません。中華圏独自のイベントに便乗して、中秋節セールがはじまると、あちらこちらに個性的な月餅が並びます。コーヒーやジャスミン風味の月餅ギフトセットを売り出すスターバックスの隣で、多彩なフレーバーアイスクリーム月餅に力を入れるハーゲンダッツ。チョコレートの老舗ゴディバやドーナツ専門店ミスタードーナツまでもが、「月餅もどき」に力を入れています。「いわゆるオーソドックスな月餅を見つけるほうが難しいかも」と、台湾在住の友人が苦笑いしていました。

石橋眞知子

石橋眞知子Machiko Ishibashi

学習院大学卒業。在学中よりラジオパーソナリティやテレビレポーターとして活躍。その後、アメリカ・ノースウエスタン大学で日本語教師をし、イギリス・オックスフォード大学で美術史や演劇を学ぶ。以来、異文化コミュニケーションやマナーのレクチャー、企業のコンサルテーションなど幅広く活動。英会話に関する著書多数。2006年には「プロトコールの基本」(日本ホテル教育センター)の監修プロデュースを手がけた。2015年に日本クロスカルチュラルコミュニケーション協会を設立し、現在会長を務める。