MARK'S ||| 株式会社マークス

当社会社情報を騙る、悪質なECサイトにご注意ください

【世界のギフトマナー】国別 贈り物上手になるためのヒント by石橋眞知子【世界のギフトマナー】国別 贈り物上手になるためのヒント by石橋眞知子

ギフト文化は、各国の歴史や習慣とともに育まれるもの。 それだけに、ギフトにまつわるマナーにもお国柄が色濃く反映されます。 プロトコール(国際交流のルール)に精通する筆者が、ギフトの習慣やタブーを国別に解説します。

【フィリピン編】従業員から取引先まで、すべての人にクリスマスギフトを!

国民の83%がカトリック教徒のフィリピンは、アセアン唯一のキリスト教国です。信仰心が厚く根は真面目ですが、とても陽気で人懐っこい。歌、ダンス、パーティがこの上なく好きで、老若男女、それぞれが人生を謳歌しているように見えます。はて、誰とでも友達になってしまう人づきあいが上手なフィリピン人、彼らは普段の生活でどんなギフトを贈り合っているのでしょうか?

【フィリピン編】従業員から取引先まで、すべての人にクリスマスギフトを!
著者:石橋眞知子 / 編集:永岡綾 / イラスト:坂本朝香
*掲載情報は、著者の経験および独自のリサーチに基づくものです

Q. どんなときにギフトを贈る?

最大のギフトイベントは、クリスマス!

街角や商店の軒先にマリア像が飾られ、礼拝を欠かさない、敬虔なキリスト教徒が多いフィリピン。最大のギフトイベントは、言わずもがな、クリスマスです。それも、欧米諸国とはまったく違う盛り上がりを見せます。

夏が過ぎ、9月に入った途端、「もうバーマンス(Ber months)だね」という声が町中から聞こえてきます。耳新しいこの表現は、フィリピンスタイルの「クリスマス準備期間」のこと。そう、9月はSeptember、10月は October 、11月はNovember、 そしてクリスマスの12月はDecemberと、4ヶ月間 "~ber" のつく月が続くため、まとめて「バーマンス」と呼ぶのです。

商店街は軒並み赤と緑のクリスマスカラーに様変わりし、あっという間にツリーの飾り付けがはじまります。まだ残暑厳しい折、夏の名残を十二分に味わっている日本人とは裏腹に、フィリピン人の心はここにあらず。もうクリスマスに飛んでいるのですね。

いよいよクリスマスになると、ほとんどのフィリピン人は、勤務先で仕事仲間と、そしてプライベートで家族や友人たちと、最低2回はお祝いをすることになります。特に企業主催のクリスマスイベントはとにかく盛大なのだとか。従業員や取引先など、仕事で接点を持つ人たち全員にクリスマスギフトが配られます。莫大な経費がかかり企業も大変......と思いきや、なんとフィリピンでは「クリスマスギフト手当」という非課税手当項目があり、ギフト購入には税金がかかりません。世界広しと言えども「クリスマスギフト」が非課税とは、聞いたことがありません。ちなみに、企業が配るギフトは、ほとんどが食品。缶詰やパスタなどがぎっしり詰まったボックスが用意されるそう。日本のお歳暮と同様、実用品が喜ばれるのですね。

一方、友人同士のクリスマスパーティでは、「マニート・マニータ(Manito Manita、スペイン語で「男・女」の意味)」と呼ばれる、ちょっとユニークなギフトの渡し方をするそう。あらかじめパーティの参加者リストからくじ引きでプレゼントを渡す相手が決められます。当日、その相手(私のマニート、私のマニータ)に渡すギフトを選んで会場に行くのです。もちろん贈り物を手にするまで、誰が誰のギフトを購入したかは贈り手以外にはわかりません。参加者全員が最後までドキドキして、パーティは必ずや盛り上がるそうです。

ちなみにクリスマスなどのお祝いイベントに欠かせない料理が 「レチョン(Lechon)」という仔豚の丸焼き。約330年も統治下にあったスペインの典型的な豚料理が、いつのまにか現地好みの味つけにアレンジされて、フィリピンの名物料理として愛されているのです。

18歳女子の誕生祝いはスペシャルに

フィリピンのバースデーパーティは、誕生日を迎える人がすべて責任をもって執り行うシステムです。たとえばレストランでバースデーディナーをみんなでわいわい食すると、会計はすべて誕生席のところに回ってきます。ちょっとした出費を覚悟して、新たな歳を迎えるというわけです。

誕生日ならではの定番メニューは「パンシットビーフン(Pansit Bihon)」と呼ばれる肉や野菜の具だくさんビーフン。長い麺が長寿を連想させることから、バースデーヌードルと言われてもてはやされているようです。日本の年越しそばと同じ意味合いですね。

ところで、日本では男女問わず20歳で成人ですが、フィリピンでは女子が18歳、男子が21歳で大人の仲間入りをします。男性の場合はただ賑やかに誕生会を開催するのに対して、女性の場合、18歳の誕生日には華やかな衣装を身につけて 「デブー(Debut)」という豪華なパーティを開きます。パーティでは、18人の男性から赤いバラを1本ずつ受け取り、一人ずつダンスをしていく......何ともロマンティックな演出がなされます。親戚や友人たちが持参するギフトは、ジュエリーやバッグ、パーティシューズなど、大人への階段をのぼった女心を揺さぶるものばかりです。

ただし、ヨーロッパの上流社会の風習、社交界のデビュタントを踏襲したこの習慣は、フィリピンでも富裕層に限られたセレモニーです。国民の大半を占める貧困層の18歳は、そんな絢爛な場とは程遠く、慎ましい暮らしの中で成人を迎えています。

結婚祝いは、ダンスタイムに

結婚のお祝いには、食器や調理用具など、新婚家庭にふさわしいギフトが贈られます。日本のようなご祝儀の習慣はありません。ブライダルレジストリーシステム(ギフトを受け取る人が欲しいものをリスト化し、贈る人がそこから予算に見合ったものを選ぶシステム)も浸透していて、活用している人たちもいます。このあたりは、欧米のスタイルと共通していますね。

ただひとつ、フィリピンらしいお祝いの仕方に、披露宴会場でのダンスタイムがあります。新婚カップルがダンスをし、参列者が祝福の気持ちを込めて新郎新婦のスーツやドレスにお札をはさんでいくのです。100ペソや500ペソのお札をひらひらさせながら踊る幸せそうなカップルを見て、大きな拍手が湧きます。お札をむきだしにするのを嫌がる日本では、まず見られない光景ですね。

Q. ギフト文化の特徴は?

フィリピンで間違いのないギフトは、「食」です。それを表す、ちょっとおもしろいエピソードを聞きました。日本に旅行中のフィリピン女子によると、「バレンタインは、チョコレートより"ジョリビー"だなあ」とのこと。「ジョリビーって!?」と思わず聞き返した私に、とうとうと説明してくれました。

「ジョリビー(Jollibee)」とは、ミツバチのマークのファーストフードチェーンのこと。フィリピン発のこのお店のメニューは、地元の食文化に根ざしていて、フィリピン人好みの甘い味つけにしてあります。「フライドチキンと米飯、スパゲティとコーラなどの独自のセットメニューがフィリピンの若者の心を射止め、マクドナルドやケンタッキーフライドチキンなどの大手チェーンもおよそ太刀打ちできない模様です。

そんな大人気のジョリビーセットを贈られたら、女子ならだれでも大喜びだと彼女は言い切りました。なるほど......食は贈り物のマストアイテムですよね。

Q. ギフト選びのポイントは?

企業からもクリスマスプレゼントが贈られるフィリピン。個々の関係においても、贈りものを大切にします。家に招待されたなら、手土産にはフルーツやお菓子の詰め合わせが喜ばれます。

クリスマスが過ぎて大晦日までの間もまた、フルーツの詰め合わせがギフト市場を賑わせます。それも、マンゴーやリンゴ、洋ナシなど、丸い形をした果物ばかり。「丸」は富と繁栄を意味する縁起のいい形とされ、丸い果物を詰めたバスケットは大晦日から新年を迎える時期のギフトの定番だそうです。

バレンタインデーのギフトでは、バラの花とチョコレートが定番。ちなみに、フィリピンではバレンタインの贈り物は、決まって男性から女性へ。日本のように女性からプレゼントすることはないそうですよ。要するに、1年を通して「花と団子」が喜ばれるお国柄のようです。

Q. 気をつけたいギフトのマナー&タブーは?

「花と団子」が間違いのないギフトであるものの、フィリピン女性はロマンティックな一面も持ち合わせています。ジュエリーや香水、高級ブランドグッズに憧れている人は多いよう。夫婦や恋人同士なら最上のギフトになるのですが、それだけに、男性が軽い気持ちで香水やブランド小物を女性にプレゼントすると大変な誤解を生んでしまうので、避けたほうが無難です。

また、中国の影響を受けているのか、靴やスリッパなどは「受け取った相手が新しいものを履いて逃げてしまう」というイメージがあるようで、恋人同志ではご法度です。

Q. ラッピングはどうしたらいい?

フィリピンでは、食のギフトの多くは透明度の高いセロファンのようなもので包まれていて、どんな果物や食品が入っているかが一目でわかります。食べ物や花以外の小物などは、ラッピングが施されます。色とりどりのラッピンググッズがあり、特にルールやタブーはなし。結婚祝いギフトは、白い包装紙にシルバーのリボンが主流だそうです。

石橋眞知子

石橋眞知子Machiko Ishibashi

学習院大学卒業。在学中よりラジオパーソナリティやテレビレポーターとして活躍。その後、アメリカ・ノースウエスタン大学で日本語教師をし、イギリス・オックスフォード大学で美術史や演劇を学ぶ。以来、異文化コミュニケーションやマナーのレクチャー、企業のコンサルテーションなど幅広く活動。英会話に関する著書多数。2006年には「プロトコールの基本」(日本ホテル教育センター)の監修プロデュースを手がけた。2015年に日本クロスカルチュラルコミュニケーション協会を設立し、現在会長を務める。