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【世界のギフトマナー】海外ビジネスに役立つ!ギフトエピソード by高橋克典【世界のギフトマナー】海外ビジネスに役立つ!ギフトエピソード by高橋克典

ギフト選びのNG週から相手の好みをリサーチするコツまで、グローバルに活躍するワーキングパーソンに役立つ情報満載。 外資系の社長を歴任し、海外暮らしを経験してきた筆者が、世界のギフトにまつわるエピソードをご紹介します。

Vol.6 センスのいいギフトって何だろう?

ビジネスシーンでギフトを贈るときは、言うまでもなく、受け取る側が負担に感じるような高額な品物はNGです。そもそも、ポケットマネーでのギフトならいざ知らず、会社の経費で購入するものであれば金額の上限も決まっていることでしょう。そこで大事なってくるのが「センス」。値段ではなく、センスで勝負することを考えてみましょう!

Vol.6 センスのいいギフトって何だろう?
著:高橋克典 / 編集 : 永岡綾 / イラスト: 菅濱奈里
*掲載情報は、著者の経験および独自のリサーチに基づくものです

「ジャパンデザイン」という切り口

海外の方へのギフトには、やっぱり日本らしいものを選びたいですね。伝統工芸品ももちろん素敵ですが、日本には世界に誇るプロダクトデザイナーがキラ星のごとくいます。大御所である柳宗理にはじまって、深澤直人、佐藤オオキ、吉岡徳仁などなど。

日本人デザイナーたちは、高級な家具や装飾品だけではなく、私たちが日常何気なく使っている製品も多く手掛けているので、限られた予算でも十分に魅力的なアイテムを見つけることができます。たとえばバタフライスツールで有名な柳宗理も、おたま、ボウル、包丁など、さまざまな調理器具をデザインしています。洒落ていて、リーゾナブルで、持ち運びに便利で、しかも実用的と、何拍子も揃ったすぐれものです。

「ジャパンデザイン」の特長は、美しさと機能性を兼ね備えているところ。たとえば、近頃ギフトショップで見かけるものの中でも、天然無垢材でできたマウスパッドは想像を超える使いやすさ。また折り紙の技法でつくられた牛革の長財布や天然素材を使ったカードケースは、忙しく活動する人の心を和ませてくれるでしょう。ベーシックな服装をお好みの方なら、シンプルを極めた腕時計はきっと気に入っていただけると思います。装飾を削ぎ落としたデザインは、禅の精神に通じるものがあり、日本人が得意なミニマリズムが表現されています(欧州では "Zen Sprit" と呼ばれることもあります)。これを切り口にしたギフトは、かなりの高確率で喜ばれそうです。

開けたときの意外性を狙って

以前vol.3で、私が南フランスにあるREVOL(レヴォル)という磁器の調理器具メーカーからいただいたサプライズギフトのことを紹介しました。磁気性のお鍋に色とりどりのチョコレートが入れられていて、「素晴らしいサプライズだった」というエピソードです。

この手法をアレンジするのもおすすめです。漆器や小振りな竹かごといった日本ならではの容れ物の中に、見た目にもかわいらしい干菓子やあられなど、本来の目的とは違うものを入れることで、ちょっとしたサプライズが演出できます。さらに、通常のラッピングではなく風呂敷などで包めば、楽しさ倍増です。

実用品も選択肢のひとつ

私がドイツ系企業で働いていたときのこと。大の日本食贔屓のドイツ人にインスタント味噌汁を贈ったところ、大変喜ばれ、来日するたびにご自分で買うようになったのです。私たちが普段の生活で当たり前のように目にしている、緑茶やほうじ茶のパック、お酒のミニボトルなどは、意外に喜ばれるものです。

「そんなチープなものは......」とはじめから排除するのではなく、相手の趣味趣向に合わせて、たとえば和紙などのちょっとしゃれたラッピングをしてみると、思わぬクリーンヒットになることがあります。

そうそう、日本の入浴剤も隠れた人気ギフトアイテムだと思います。日本の温泉の素晴らしさは海外でも知られていますから、「いつか温泉に行ってみたい」という希望をお持ちの人も多いでしょう。でも、実現するのはなかなかむずかしいもの。そこで、日本の温泉を疑似体験できる入浴剤を贈る、というのもアイデアです。

フェアトレード認証アイテムを探す

「フェアトレード」とは、開発途上国の原料や製品を適正な価格で継続的に購入することにより、その国の生産者や労働者の自立的な生活を目指す貿易の仕組みを指します。もしギフトを贈る相手が社会的責任について意識が高い方だったら、フェアトレード認証を受けた製品をギフトとして選ぶことも、センスのよい選択肢と言えるかもしれません。

チョコレートをはじめとするお菓子、コーヒー、紅茶など、ギフトにしやすいアイテムも豊富にあります。ギフトをきっかけに、お互いの関心事について話が弾むのもいいですね。

来日したお客さまには「体験」をプレゼント

ここまでは、みなさんが海外へ出張などにでかける場合のお話でした。最後に、海外から来日したゲストへの「センスのいいギフト」についてもふれておきます。もしもゲストに自由な2~3時間が許されるのなら、「体験型のギフト」を検討してみてください。

たとえば、書道を体験し、自作の書をお持ち帰りいただくのはいかがでしょう? ご存知のように、ヨーロッパにも伝統的なカリグラフィーがあって、古くは紀元前のローマ帝国建国の叙事詩などが残されています。カリグラフィーは、高い芸術性を持ちながら、意味のある文章を書き、伝えることが役割です。一方、日本では、中国から輸入した文字文化が仏教伝来と重なって日本に根付き、今では小学生が学校の授業で「書道」を習うほど生活に入り込んでいます。外国人のゲストに生まれてはじめて日本式の筆を持ってもらい、文字と意味を一緒に相談し、見本を見ながら半紙に書き、ご自宅に持って帰っていただく......額装すれば、お部屋のインテリアにもなります。

また華道の場合、残念ながら活けたお花を持ち帰ることはできませんが、作品と一緒に写真を撮って差し上げれば、素敵な思い出となること間違いなしです。

ほかにも、蕎麦を打って一緒に食べるなんていうのも、きっとおもしろい体験になると思います。物理的に残らなくとも、記憶に刻まれるギフトは、相手との関係性を育むうえでかけがえのないものになるでしょう。

高橋克典

高橋克典Katsunori Takahashi

1957年生まれ。シャルル・ジョルダン、カッシーナイクスシー、WMFジャパン コンシューマーグッズなど、海外企業の子会社や日本法人の社長を歴任。ヨーロッパを中心に世界各国とのビジネスを経験し、またフランス在住経験を持つ。現在は、企業のコンサルティングをしながら、講演や執筆活動にも力を入れている。著書に『海外VIP1000人を感動させた外資系企業社長の「おもてなし」術』『小さな会社のはじめてのブランドの教科書』(ダイヤモンド社)など。