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【世界のギフトマナー】海外ビジネスに役立つ!ギフトエピソード by高橋克典【世界のギフトマナー】海外ビジネスに役立つ!ギフトエピソード by高橋克典

ギフト選びのNG週から相手の好みをリサーチするコツまで、グローバルに活躍するワーキングパーソンに役立つ情報満載。 外資系の社長を歴任し、海外暮らしを経験してきた筆者が、世界のギフトにまつわるエピソードをご紹介します。

Vol.5 どんなタイミングで? どのように?
もらった相手が何倍も喜ぶギフトの渡し方

贈る相手が顔をしかめるギフトのタブーを知り、相手が喜びそうなギフトを探し当て......さて、このエッセイもいよいよ差し上げる場面が近づいてきました。会ってすぐに、「これをお受け取りください!」とやりたいのは山々なのですが、そこはちょっと立ち止まって考えてみましょう。渡すタイミングや、渡すときのちょっとした気遣いで、相手に何倍も喜んでもらえるかもしれません。

Vol.5 どんなタイミングで? どのように? もらった相手が何倍も喜ぶギフトの渡し方
著:高橋克典 / 編集 : 永岡綾 / イラスト: 菅濱奈里
*掲載情報は、著者の経験および独自のリサーチに基づくものです

出張先では、いつ渡す?

海外出張で取引先に手土産を持参した場合、いつ渡すのがベストでしょうか? 先方のスタッフでシェアできるようなお土産、たとえばお煎餅や甘いお菓子のようなものでしたら、ミーティング前の雑談時にお渡しするのが、雰囲気も和らいでよいと思います。もちろんコーヒーブレイクの際にみんなでいただくのも楽しいですし。

一方、取引先の幹部に少し個人的なギフトを差し上げるのであれば、初日のミーティングが終わって会食に移る前や、相手の執務室などで二人きりになれる場面まで待ったほうが適切かもしれません。ほかのスタッフとは違った特別感がでますし、なぜこのギフトを選んだのかをゆっくりと説明できますから。

言うまでもないことですが、ご夫婦向けのギフトを持参し、相手の奥さまやご主人が会食に参加することがあらかじめ分かっている場合は、レストランでお二人がそろっているときにお渡しすると、驚きも倍増します!

海外からのお客さまは、状況をよく観察して

逆に、海外から日本へお客さまを迎えた場合はどうでしょう。ビジネスミーティングの場では、取引先もPCや書類の束などを抱えているもの。荷物で手いっぱいの相手に贈り物の包みを渡しても、ちょっと困ってしまいます。特に雨の日に紙製のショッピングバッグを渡すのは、かえって邪魔になってしまうかもしれません。

ギフトの大きさにもよりますが、もし夜の会食がセットされているなら、ミーティングの前後に渡すのは控え、会食が終わるタイミングで渡すのがおすすめです。ホテルに帰るタクシーまで、あるいはホテルに到着するまで、ギフトと荷物の一部を持ってお送りするのがよいでしょう。

夜の会食がない場合は、やはりミーティング終了時に渡すことになります。でも、一旦渡したものを、同じようにホテルや空港まで、もしくは利用する交通機関に乗るところまでお持ちすれば、相手の喜びはひとしおです。

タイムスケジュールには要注意

ミーティングが終わり、そのまま相手が空港や駅に向かわなければならない場合、時間について細心の注意を払ってあげてください。

ミーティングは現場のマネージャークラスで行い、ギフトは社長から差し上げる、というケースもあるでしょう。ミーティングが予定時間ギリギリまで行われていたのに、社長が会議室に入ってきて「このたびは弊社へのご訪問、誠にありがとうございました。これは心ばかりの贈り物なのですが......」から始まって、ギフトについてのうんちくを語りはじめると、部下にはそうそう止められません。そうこうしている内に、空港や駅へ行く時間が刻一刻と迫ってきてしまいます。

途中出場の上司からギフトを差し上げるような場合は、十分に時間の余裕を持つか、あらかじめ「先方は何時には当社をご出発になります」と伝えておきましょう。

「つまらないものですが」はやめましょう!

人間の心の中は他人にはわかりません。しかし相手が喜んでくれるであろうと一生懸命考えたギフトなのですから、日本的に謙遜する必要はまったくありません。

それでも、日本人的には"I (We) believe you will like it.(あなたが喜んでいただけると確信しています)"とはなかなか言えないものです。そこで、"I (We) hope you will like it. (喜んでいただけると、いいのですが)"くらいはいかがでしょう?

なぜそれを選んだのか?を伝える

ギフトをお渡しするとき「なぜこれを選んだのか?」という理由を簡単に説明すると、相手の印象に残ること間違いなしです。

説明するには、まず包みを開けてもらわなくてはなりません。欧米ではギフトはその場で開けるのが礼儀となっています。しかし、中国系の年配の方は、贈り物をその場で開けることを、はしたないと考えています。とはいえ、最近は柔軟になってきていますから、年配の中国系の方にも、こちらから「ぜひ、この場で開けて見てください」と声をかけてもよいかもしれません。

相手が目の前で開けてくれたら、贈り物のコンセプトや機能、出所について、簡単に説明してあげてください。理解が深まり、よき思い出にもなります。ただし、くれぐれも冗長にならないように気をつけてくださいね。何ごとも、「過ぎたるは、及ばざるが如し」です。もしもあなたご自身がその贈り物を使った経験があったり、前から知っていたとすれば、それは最高の決め台詞になりますね。だって、よさを知っているわけですから。

自然に渡す状況ができればベスト

理想を言えば、ミーティング後の雑談や会食の際、相手と仕事以外の話題、特に趣味の話になった頃合いに渡せると最高ですね!

たとえばこんな具合に。

「週末はどのようにお過ごしですか?」
「ウィークデーはどうしてもオフィスでコーヒー、ということになってしまうのですが、週末は日本茶を淹れて、妻と楽しんでいますよ。体にもいいと聞くし、心が落ち着きますね」
「そうですか、それはいい時間を過ごされているのですね。ところで今日は奥様とのティータイムのときに使っていただきたく、こんなものをご用意しました」

と、言いつつ茶碗のセットを差し上げる......。

もちろんこれは、このエッセイのvol.2 でご紹介した「贈る相手の好みを知る」という事前準備が必要なので、いつもこううまく運ぶとは限りませんが。大切なのは、相手の立場に立って、真心を込めて差し上げる、ということにつきるのではないでしょうか。

高橋克典

高橋克典Katsunori Takahashi

1957年生まれ。シャルル・ジョルダン、カッシーナイクスシー、WMFジャパン コンシューマーグッズなど、海外企業の子会社や日本法人の社長を歴任。ヨーロッパを中心に世界各国とのビジネスを経験し、またフランス在住経験を持つ。現在は、企業のコンサルティングをしながら、講演や執筆活動にも力を入れている。著書に『海外VIP1000人を感動させた外資系企業社長の「おもてなし」術』『小さな会社のはじめてのブランドの教科書』(ダイヤモンド社)など。