ギフト選びのNG週から相手の好みをリサーチするコツまで、グローバルに活躍するワーキングパーソンに役立つ情報満載。 外資系の社長を歴任し、海外暮らしを経験してきた筆者が、世界のギフトにまつわるエピソードをご紹介します。
Vol.4 贈る前にちょっと待ってください! ギフトNG集【東南アジア編】
早いものでこのコラムもVol.4を迎えることになりました。いつもお付き合いいただき、ありがとうございます。贈り、贈られ、プライベートでは言うまでもなく、ビジネスシーンだって、ギフトは人間関係構築の栄養になります。さて、Vol.1では、欧米の人たちにギフトを贈る際に気をつけていただきたい幾つかのポイントをお届けしました。ご好評につき、今回は「ギフトNG集」東南アジア編です。
中国では、「縁起担ぎ」に要注意
一口に中国人と言っても、12億の民と10億人を超える漢族をはじめとして、55(諸説あります)もの少数民族が広大な国土に暮らしている国ですから、さまざまな風習があるようです。言葉だって、地方に行けば標準語である北京語では通じないこともしばしば。でも、ここではビジネスで接点のありそうな、大都市で仕事をしているビジネスピープルを想定してお話ししますね。
中国人は、一般に言葉の縁起担ぎをする習慣があります。ある品物の名前が縁起のよくない言葉と同じ発音の場合は要注意。例えば、靴は「シィエ」で、「邪(おかしい、怪しい)」と同じ発音になります。また傘は「サン」で、「散(ばらばらになる)」と同じ発音なので、靴や傘はギフトにはおすすめできません。
よく知られているのは置時計「ソンチョン」で、「送終(死を看取る)」と同じ発音になるため、置時計を贈るのは縁起が悪い、ということになってしまいます。もちろん仲のいい友人や若い人同士であれば気にしないかもしれませんが、ビジネスシーンでは避けたほうが賢明です。
ほかにもギフトにふさわしくないとされるアイテムがあります。たとえばハンカチは、悲しいときに涙を拭くものという連想があり、また靴下やタオルなどのプライベートで使うアイテムも好まれません。このあたりは欧州と似ていますね。
色と数字にまつわるイメージ
中国では色が持つ吉凶のイメージが根強いので、配慮が必要です。不吉とされる色は、白、藍色、黒。これらの色のギフトは控えたほうが無難かもしれません。また、黄色にはよい意味もありますが、結婚祝いや商談相手に贈るのは好ましくないと言われています。一方、金色やオレンジ色は、金運をアップしますから、ビジネスシーンでも大いに喜ばれます。
赤は一般的にポジティブな色とされていますが、赤色で書かれた手紙は「絶交」を意味するそうですよ。また、緑の帽子は「妻を寝取られた夫」という意味があるそうで、女性への贈り物にもよくありませんし、もちろん男性には緑色の服飾品を贈ってはいけません。
そして、品物の個数にもちょっとした注意が必要です。一つのアイテムを贈る場合は問題ありませんが、果物やお菓子など同じものが複数ある状態で贈る場合や、複数のアイテムを贈る場合、日本では奇数は縁起がいい、とされていますが、中国では偶数が好まれるのです。結婚祝いのご祝儀なども、日本とはまったく逆で偶数の金額を贈ります。日本で「末広がり」を意味する数字の八は、中国でも吉。ただし、たとえ奇数でも九「ヂォウ」は「久(久しい)」と同じ発音で縁起がいいため、例外だそうです。
アジアに根付くムスリム文化も忘れずに
アジアにも多くのムスリム、即ちイスラム教徒の人々が暮らしています。イスラム教はアラビア半島で誕生した宗教ですが、実は人口比で言えば中東よりも、アジアの方がムスリム人口は多いのです。
トップのインドネシアの約2.1億人を筆頭に、インド1.6億人、バングラデッシュ1.5億人、マレーシアの2,000万人と続き、世界のイスラム人口の約62%(9.7億人)がアジアに暮らしていると言われています(出典:ハラル・ジャパン協会)。
ですからムスリムの人に「ハラーム」、つまり唯一神である「アッラー」が禁止している食べ物を贈ることがあってはなりません。よく知られているのは、豚肉、アルコール飲料やアルコールを含む調味料などです。詳しくはインターネットなどでも調べられますので、ハラームには最大限の注意を払ってくださいね。
韓国では「猫グッズ」はNG !?
続いて、お隣韓国の情報も。韓国人が嫌う贈り物の筆頭は、何と言っても靴ではないでしょうか。靴を贈られると、それは「この靴を履いて、立ち去れ」の含意があるからだとされています。また韓国の年配者は、一般的に猫に「不吉さ」を感じることがあるので、猫に関連するギフトには充分配慮をしてください。
アジアの人々はみんな贈り物が好き
ここまで、注意していただきたいことをいろいろと書きましたが、基本的にアジアの人々は贈り物が大好きです。私も中華系の人たちと長年仕事をしてきましたが、彼ら、彼女たちは来日するたびに必ずお土産を携えてきくれて、うれしい思い出がたくさんあります。
ですからNGはNGとしてご理解いただいた上で、気軽に相手が喜びそうなギフトで、どんどん仲よくなってくださいね。
おまけに......夏の商談のおもてなし情報
蛇足ですが、夏の暑い日に商談となったとき、日本ではキンキンに冷えた飲み物を供しますよね。でも、東南アジアの女性たちは、冷たい飲料はほとんど口にしませんから、覚えておくといいでしょう。美容と健康のため? もちろんそれもありますが、そもそもあまり習慣がないのです。一方男性はビールに氷を入れて飲む人もいますよ。
高橋克典Katsunori Takahashi
1957年生まれ。シャルル・ジョルダン、カッシーナイクスシー、WMFジャパン コンシューマーグッズなど、海外企業の子会社や日本法人の社長を歴任。ヨーロッパを中心に世界各国とのビジネスを経験し、またフランス在住経験を持つ。現在は、企業のコンサルティングをしながら、講演や執筆活動にも力を入れている。著書に『海外VIP1000人を感動させた外資系企業社長の「おもてなし」術』『小さな会社のはじめてのブランドの教科書』(ダイヤモンド社)など。