ギフト選びのNG週から相手の好みをリサーチするコツまで、グローバルに活躍するワーキングパーソンに役立つ情報満載。 外資系の社長を歴任し、海外暮らしを経験してきた筆者が、世界のギフトにまつわるエピソードをご紹介します。
Vol.2 贈る相手の好みを知ってこそ、ビジネスパートナーになれる
せっかくギフトを差し上げるのなら、相手が心底喜んでくれるものがいいに決まっています。でも、ビジネスオケージョンでお会いする方の好みや趣味を知るには、ちょっとした工夫が必要です。仕方なく「まあ、無難な品でいいか......」なんてことに落ち着かないように、たとえまだあまり親しくない人であっても、何とか相手が喜ぶギフトを知る方法を考えてみましょう!
正攻法で秘書やアシスタントに尋ねる
「なあ〜んだ」と言わないでください。もし、それができる環境だったら、まずはギフトを差し上げる相手といつも接している方に聞いてしまうのがいいでしょう。ただし「そんなお気遣いは無用です」とやんわりと断られてしまわないよう、漠然と「何がお好きですか?」と尋ねるのではなく、「次に御社に伺う際に、日本の和紙でできた文房具か、漆器の器を差し上げようと考えているのですが、どちらがお好みだと思われますか?」のように具体的な例を挙げるのが、先方から答えを引き出すコツです。
名前から予測できることも
そんなツテもなく、まったくの初対面だったらどうしましょう? 実は日本は世界で最も名前の種類が多い国の一つだそうです。さらに総移民人口が少ないという条件を考えると、その多様さはまれに見るケース! 1997年版の『日本苗字大辞典』によると、苗字だけでなんと29万1129種類! それに比べると、欧米では苗字や名前の種類は限られていて、その人のバックグランドを表していることが少なからずあります。
例えば、ユダヤ系の人の代表的な姓としては、Abraham, Berman, Diamond, Perahia など。また名前としては、Joel, Oscar, Herbert, Fritz, Harold などが挙げられます。アラブ系の名前として、男性なら Abbas, Ali, Hasam, Habib, 女性なら Farah, Zahra などが多いようです(ちなみに、それぞれに意味を持っています)。挙げだしたらきりがないのですが、要するに現国籍とは別に、これから初めて会う人のバックグランドが名前から推測できる、というわけです。
もしかして彼は、彼女はユダヤ教徒かな?とか、イスラム教徒かな?と、いう具合に予測できたら、そこからギフト選びのヒントや、気をつけるべきタブー情報が得られるはず。Vol.1の「ギフトNG集 欧米編」を参照してみてくださいね。
ファッションや立ち居振る舞いから、趣味志向を推察
もし一度でも会ったことがある人だったら、その人の服装からおおよその趣味志向はわかります。いつもダークスーツをパリッと着こなしている人、デニムジーンズにセーターやジャケット、というカジュアルな服装がお好みの人。女性ならハイヒールを履いているのか、フラットで歩きやすい靴に活動的な服装か、などなど。服装は、往々にしてその人のライフスタイルを表しているものです。
前者ならビジネスオケージョンで使える実用的な品物、例えば日本の文房具類は喜ばれるでしょう。また後者なら個性豊かな品物を好きになってくれるかもしれません。日本のアーティストがデザインしたオブジェなども選択肢に入ってきそうです。
また、立ち居振る舞いから推察できることもあります。声高らかにジェスチャーを交えながら闊達に喋る人と、言葉を選びながら物静かに喋る人とでは、自ずと好みが違うもの。前者でしたら、色彩豊かな品物を好まれるかもしれませんし、後者なら渋い色合いの品物に価値を見出すかもしれません。
何気ない会話の中に糸口を探す
仕事以外の会話から相手の好みを知るチャンスはたくさんあります。特に趣味の話題では。ビジネスミーティングの休憩時間、ランチタイム、ディナータイムには、仕事の話だけではなく、相手が余暇にどのような過ごし方をしているのか、趣味の話を積極的にしてみましょう。ただし特に趣味を持っていない人ももちろんいるわけですから、いきなり "What is your hobby ?" ではなく、"Do you have hobby ?" から始めてください。そこから糸口を見つければ話が弾み、その人となりが相当鮮明になるはずです。
私も上記のような質問によって、ベルギーの取引先が自宅で盆栽を何鉢か愛でていることを知り、次に会った際、英語で書かれた盆栽図鑑を差し上げたところ、とても喜ばれたことがあります。また、ワイン好きな取引先に「ところで日本酒をどう思います?」と水を向けたところ、「大好きなんだけど、我が家の近くではなかなかよい銘柄が手に入らないんですよ」ときました。これで次のギフトは決まったようなものです。
「料理が趣味で、特に最近は日本食にトライしはじめた」なんて話を聞けば、ギフトの候補は随分絞り込まれます。もちろんレシピ本でもいいのですが、日本の調理器具などは、本当に喜ばれます。特に日本の卵焼き器は外国には存在しませんし、お玉や味噌漉し、和包丁、おろし金など、気軽に持っていけて、重宝する料理道具はいろいろとあります。
余談ですが、特にディナーの席などで話が興に乗ってくると、つい聞きたくなるのがプライベートに関する質問です。既婚か未婚か、また宗教や政治信条の話は、余程個人的に仲よくなるまでは基本的にNGですからご注意を。でも、こんな質問の仕方なら、決して相手は気分を害することはないでしょう。-- "Do you have family ?" もし連れ合いがいらっしゃったり、お子さんをお持ちなら、ギフトのチョイスはぐーっと増えますよね。
大切なのは、真心を贈ること
熟慮して選ばれたギフトは贈る側の真心が相手に伝わり、モノ自体に何倍もの価値が加わった、ということになります。ですから単に有名だから、という理由だけでギフトを選ばずに、相手のことを考えながら選びましょう。それでも妙案が思いつかないときには、素敵なギフトショップに足を運んでみてはいかがでしょう? お気に入りのお店をいくつか見つけておくのがおすすめです。ギフトは受け取る側だけでなく、贈る側もワクワクするものですから。
高橋克典Katsunori Takahashi
1957年生まれ。シャルル・ジョルダン、カッシーナイクスシー、WMFジャパン コンシューマーグッズなど、海外企業の子会社や日本法人の社長を歴任。ヨーロッパを中心に世界各国とのビジネスを経験し、またフランス在住経験を持つ。現在は、企業のコンサルティングをしながら、講演や執筆活動にも力を入れている。著書に『海外VIP1000人を感動させた外資系企業社長の「おもてなし」術』『小さな会社のはじめてのブランドの教科書』(ダイヤモンド社)など。