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【世界のギフトマナー】国別 贈り物上手になるためのヒント by石橋眞知子【世界のギフトマナー】国別 贈り物上手になるためのヒント by石橋眞知子

ギフト文化は、各国の歴史や習慣とともに育まれるもの。 それだけに、ギフトにまつわるマナーにもお国柄が色濃く反映されます。 プロトコール(国際交流のルール)に精通する筆者が、ギフトの習慣やタブーを国別に解説します。

【インド編】プラス1ルピーで、祝福の気持ちを贈る

ひと昔前まで、インドと言えば「カレー」「ヨガ」「貧困」を連想する人が大半でした。しかし、ここ数年でIT産業に長けたビジネス大国へと様変わりしています。そもそもは、紀元前2600年頃に栄えたインダス文明に端を発するインド。4世紀にグプタ朝のもとでヒンドゥー教が定着しました。インド古来のバラモン教から発達したヒンドゥー教は、シヴァ神やヴィシュヌ神を信仰する多神教であり、カースト制度と結びついて人々の生活の礎を築きました。カーストとは、種姓と呼ばれる4つの「ヴァルナ」と職業区別の「ジャーティ」による身分制度です。1950年に憲法で廃止されたものの、その影響は今も根強く残っています。

一方、新風のデジタル社会は分け隔てのないフラットなもの。デジタル産業がインドで急激に発展したのは、未だ絶えない差別の裏返しなのかもしれません。さて、そんなインドには1600もの言語があります。公用語のヒンディー語すら約40%の人しか話せません。宗教は、ヒンドゥー教徒が76%、イスラム教徒が12%で、キリスト教、シーク教、仏教などの少数派も。このように多様で複雑なインドを一括りに語るのは難しいのですが、庶民の間に根付く贈り物習慣に触れることで、少しでもその生活文化を理解していただければと思います。

【インド編】プラス1ルピーで、祝福の気持ちを贈る
著者:石橋眞知子 / 編集:永岡綾 / イラスト:坂本朝香
*掲載情報は、著者の経験および独自のリサーチに基づくものです

Q. どんなときにギフトを贈る?

代表的なギフトイベント、ディワーリ

欧米のギフト市場が活気づくのは、何と言ってもクリスマスとバレンタインデーですが、インドでは違います。クリスマスは単なる年末イベントとして楽しむ程度で、バレンタインデーもさほど注目されていないよう。一方、インド独自のお祭りは大盛り上がり。感謝の印としてギフトを贈る機会がたくさんあります。その代表格が「ディワーリ(Diwali)」と「ラクーシャバンダン(Raksha Bandhan)」です。

ディワーリとは、毎年10月末〜11月初旬に行われるヒンドゥー教の新年を祝うお祭り。ちょうどヒンドゥー暦の7番目の月のはじまりに当たり、新月と重なります。別名「光のフェスティバル」と呼ばれ、どの家もライトアップされて街中が華やかな光で輝きます。ディワーリには「ラクシュミー(Lakshmi)」という女神を祀る意味もあり、女神を暗い外から明るい家に招き入れるために、ランプやろうそくを使って家の周りを一晩中照らし続けるのです。

さて、ディワーリの祝日は5日間あります。まずは大掃除をし、そのあと新調した服に着替えて、親戚の家を一軒ずつ回ってお祝いします。口にするのは、「ミターイ(Methai)」という甘いお菓子とマサラティ。また、ディワーリを機にキッチン用品や家電を購入する人も多いそう。というのも、ラクシュミーは富やお金を司る神で、ディワーリの時期にお金を使えば使うほど縁起がいいとされているためです。これぞ商機とばかりに、デパートや商店は1ヶ月前から軒並みディワーリセールを開催。自分のための買い物もさることながら、贈答品を買う客でごった返します。日本のお歳暮と同様、インドでも、新年を前に、日頃お世話になっている人や取引先にギフトを贈るのが習慣になっているのです。

大型店舗には「Happy Diwali」と書かれたコーナーができて、お菓子や食料の詰め合わせがずらり。定番はナッツやドライフルーツ、昨今はチョコレートの詰め合わせも人気を呼んでいます。以前は金の女神、ラクシュミーにちなんで貴金属の装身具がギフト市場に出回っていましたが、2011年あたりから人々がディワーリにかける予算が減少しているようで、ここ数年は菓子類、実用的な家電製品やインテリア製品が売れているのだとか。とはいえ、企業では給料の1ヶ月分相当のディワーリボーナスが支給され、各家庭の出費補填に使われているようです。もちろん、メイドや運転手にもボーナスが手渡されるそうですよ。

女性と男性が兄弟の契りを交わす、ラクーシャバンダン

もうひとつのギフトイベント「ラクーシャバンダン(Raksha Bandhan)」、または「ラーキーバンダン(Rakhi Bandhan)」もユニークなお祭りです。ヒンディー語で「保護者の絆」を意味するこのお祭りは、兄弟の愛と絆を確かめ合うことが目的。女性は兄弟の右手首に「ラーキー(Rakhi)」という吉祥の紐を巻き、彼らの健康と幸福をお祈りします。ラーキーを巻かれた男性は、その女性を守ることを誓い、返礼として贈り物を渡さなければなりません。返礼には、現金や貴金属、サリーやパンジャビドレスなどの衣服、チョコレート、お菓子などが選ばれます。

ちなみに、女性がラーキーをプレゼントする相手は血縁の兄弟とは限りません。従兄弟や親戚、友人、そして複数でもOK。ただし、ラーキーを巻かれた男性はその女性と「兄弟の契り」を結ぶゆえ、恋愛の対象からは外れることになります。密かに好意を抱いていた女性からラーキーを巻かれる男性の心理を考えると、うれしいような悲しいような、極めて複雑ですね。

現在マーケットに台頭しているラーキーのほとんどがカラフルな紐でできています。ストーンや羽根をあしらった豪華なものや、時計機能の付いたものもあって年々多彩になっている模様。遠方に住んでいて当日会えない相手には、ラーキー付きのグリーティングカードも重宝がられているそうです。さらに、男性が返礼に使うギフトの商戦がデパートや商店、インターネットのショッピングサイトで加熱しています。

結婚式には、プラス1ルピーのご祝儀を

インドでは、結婚式が人生の最大イベント。新郎は年収の4倍は注ぎ込むと言われています。セレモニーはこれでもかというほど入念で長い。なんと、ほぼ1週間は続きます。新郎の御披露目パレードにはじまり、ヒンドゥー教に則った儀式がいくつもくり返され、そしてお決まりのダンシングタイムへ。

参加者のほとんどは、ご祝儀としてお札でできた首飾りを新郎の首に掛けます。もちろん日本のようにご祝儀袋に入れて手渡す場合も。ただし、インドのご祝儀袋にはあらかじめ1ルピーコインか貼り付けてあります。というのも、インドでは奇数が好まれるから。それも、501、1001、2001のように最後に1を付けて渡すのがミソなんだそうです。

Q. ギフト文化の特徴は?

さきほどの結婚式のお話では、ご祝儀に1ルピーを足して渡すのがミソ、とお伝えしました。これ、結婚式に限らず、出産祝いなど、現金でのお祝いに共通のことなのだそう。「1ルピーは幸せをもたらすとも言われています」とインド人の留学生が解説してくれました。

また、結婚式や誕生パーティーなどにお祝いを持参してくれた人たちには、必ず「リターンギフト」を用意しするのがインド式。言わば、感謝の気持ちを込めた「幸せのおすそ分け」です。お返しにあれこれと気を揉む日本人の心遣いと似ていますね。

Q. ギフト選びのポイントは?

インド人の好むプレゼントは、チョコレートをはじめとする菓子類。次いで、花や装飾品も喜ばれます。インドで好まれる三大色は、赤、黄、緑です。ゆえに、たとえばプレゼント用のお花なども、明るい色のものを選ぶといいでしょう。

Q. 気をつけたいギフトのマナー&タブーは?

ヒンドゥー教徒が多いので、避けるべきは酒類と皮革品です。また、牛は神聖な生き物なので、食すことはもちろん、装飾品、生活用品として使うのもご法度です。またヴェジタリアンが多いので、肉類や卵、乳製品も控えたほうが無難です。

さらに、色についてもタブーがあります。ギフトでは、白は絶対に避けましょう。白は喪に服すための色なのです。たとえば結婚式でも、欧米諸国のように純白のウエディングドレスは着ません。結婚式には赤いドレスが一般的です。

装飾品は喜ばれるとお伝えしましたが、恋愛感情のない場合、間違っても男性から女性へ宝石は贈らないように。親密な関係になりたいと誤解されても仕方ありません。

Q. ラッピングはどうしたらいい?

明るい色を好むというのは、ラッピングも同様。インド女性の美しいサリーをイメージしながら、色とりどりの包装紙やリボンでカラフルに仕上げると、喜ばれそうです。

Q. 最近のギフトトレンドは?

インドは2017年第3四半期のスマートフォン出荷台数が4000万台を超え、米国を抜いて世界第2位のスマートフォン市場になったそうです(出典:Cnalys)。それだけに、スマホを使ったビジネスも盛んです。電子マネーサービスも繁盛しているし、Eコマース市場も賑々しく、電化製品、ファッション、ベビー用品、美容製品が売れ筋のよう。こうした流れは、もちろんギフト商戦も同様。スイーツや花、雑貨などを贈ることのできるギフトポータルサイトが人気を博しています。こうしたサイトのユーザーの年齢層は、18から35歳のユーザーが90%。インド発のECサイト「フリップカート(Flipkart)」や「スナップディール(Snapdeal)」、そしてアマゾン・インディアの3大サイトが売上を拡大し、インドのギフト市場を盛り上げているようです。

石橋眞知子

石橋眞知子Machiko Ishibashi

学習院大学卒業。在学中よりラジオパーソナリティやテレビレポーターとして活躍。その後、アメリカ・ノースウエスタン大学で日本語教師をし、イギリス・オックスフォード大学で美術史や演劇を学ぶ。以来、異文化コミュニケーションやマナーのレクチャー、企業のコンサルテーションなど幅広く活動。英会話に関する著書多数。2006年には「プロトコールの基本」(日本ホテル教育センター)の監修プロデュースを手がけた。2015年に日本クロスカルチュラルコミュニケーション協会を設立し、現在会長を務める。