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【世界のギフトマナー】国別 贈り物上手になるためのヒント by石橋眞知子【世界のギフトマナー】国別 贈り物上手になるためのヒント by石橋眞知子

ギフト文化は、各国の歴史や習慣とともに育まれるもの。 それだけに、ギフトにまつわるマナーにもお国柄が色濃く反映されます。 プロトコール(国際交流のルール)に精通する筆者が、ギフトの習慣やタブーを国別に解説します。

【オーストラリア編】ギフトには、心の込もったカードを添えて

日本の約20倍、世界第6位の国土を持つオーストラリア。しかし、人口は日本の約5分の1で、およそ2400万人しかありません。大自然の広がる壮大な土地に暮らすオージー(AussieあるいはOZ=「オーストラリア人」の意味)は、必然的におおらかで、陽気な人が多いよう。反面、自分の居住しているコミュニティに誇りを持ち、人との付き合いをとても大切にしています。また、南半球に位置するため、四季は当然ながら北半球に住む私たちとは真逆です。日本では残暑厳しい8月もオーストラリアは真冬の寒さだし、雪の散らつくクリスマスシーズンは灼熱の太陽がまぶしい真夏の装いです。このように北半球とは180度違うオーストラリア独自の生活文化に触れながら、贈り物の現状を探ってみましょう。

【オーストラリア編】ギフトには、心の込もったカードを添えて
著者:石橋眞知子 / 編集:永岡綾 / イラスト:坂本朝香
*掲載情報は、著者の経験および独自のリサーチに基づくものです

Q. どんなときにギフトを贈る?

誕生日のスリーチアーズとは?

オーストラリアでは年齢を問わず、誕生日は大切なイベントです。特に、1歳、18歳、21歳と、30歳、40歳、50歳などの節目の誕生日は、例年よりもたくさんの友人を招いて盛大にお祝いします。1歳の誕生日は、本人よりも両親のためにあるようなもの。親戚はもとより、近所の友人知人を集めて、中庭や近くの公園で赤ちゃんのお披露目をします。参加者からの「おめでとう!」のメッセージにはじまり、パパ&ママへの労いの言葉で締めくくられます。両親にとっては、赤ちゃんをキーにしてご縁のある人々同士が集まれる素敵な機会なのですね。

そして18歳と21歳も特別にお祝いします。オーストラリアでは法的に18歳で成人となるため、この年のお祝いは日本での成人式に当たります。しかし、どうして21歳も重要な年齢なのでしょう? 実は、オーストラリアでは1970年代まで21歳が成人年齢だったのです。18歳に引き下げられた今でも、21歳への思い入れが強いのかもしれませんね。「僕のときは18歳よりも21歳の誕生日のほうが盛り上がりましたね。世界中に散らばっていた親戚みんながお祝いに駆けつけてくれました」とは、現在33歳のオージーの話。人によって、家庭によって、どちらに重点を置くか違うのだそうです。

外交的でパーティー好きのオージーは、誕生日のお祝いも自宅ではなく公園やビーチ、カフェやレストランで行うことが多いそう。たくさんの人を呼び、ワイワイ騒ぎます。3年前、シドニーに遊びに行ったときのこと。ホテルの近くのステーキハウスから聞こえてきたのは、バースデーソングです。どうやらそのお店で誕生日パーティーが開かれている模様。"Happy birthday to you♪" という歌声が心地よく響き渡ったと思ったら、今度は「Hip! Hip!(ヒッピ!)」と野太い声がして、次に「Hurray!(フーレー!)」と掛け声が。この「ヒッピ!」「フーレー!」が3回くり返されました。このことを在日オーストラリア人の友人に告げると、得意そうにこう答えてくれました。

「それは『スリーチアーズ(Three Cheer)』というしきたりだよ。誕生日の主役に向かって、誰かがまず『ヒッピ!』と音頭を取ると、残りのメンバーが『フーレー!』と応じるのが決まりなんだ。それを3回くり返して終わる。いわゆる応援メッセージだね」。日本通の彼は「日本の万歳三唱に近いんじゃないかな」と解説してくれました。主役は周りの人に感謝をし、友人たちは主役を激励する。これがオーストラリア式誕生日なのですね。

女性が喜ぶギフトデー

日本でもお馴染みの「バレンタインデー」は、オーストラリアでは男性が女性に愛を伝える日。日本とは逆ですね。男性たちは、恋人や奥さんに限らず、祖母、母親にと、周囲の女性たちに日頃の愛と感謝を示します。定番ギフトは、赤いバラの花束やチョコレート。2月14日の夕方になると花束を抱えた男性が家路を急ぐ光景が見られ、ロマンチックなレストランはカップルで満席になります。

もう一つ、女性が喜ぶギフトデーといえば5月第2週の日曜日、「母の日」です。母の日のギフトとしては、花束やチョコレートが大人気。ただ、アメリカや日本のように赤いカーネーションは登場しません。ここオーストラリアでは、菊が主役。それも白い菊が贈られます。中にはチューリップやバラの花束も見られますが、カーネーションは皆無です。この違いはなぜでしょう? 「オーストラリアの5月は秋だから、菊が選ばれるのかしら?」と思いきや、この時期は春の花も流通している模様。「うーん!」とばかり調べてみると、どうやら「菊」を表す単語「クリセントマム(Chrysanthemum)」のスペルに起因しているようです。最後の3文字が「マム(mum)」。つまり「母」の意味が含まれているゆえ、母の日の花は菊になったという説です。ちなみにオーストラリアでは母親のことを "mom" ではなく "mum" と書きます。

ところで、日本では6月3週目の日曜日である「父の日」は、オーストラリアやニュージーランドでは9月1週目の日曜日とされています。「母の日は世界中ほぼ同じ日なのに、どうして父の日は9月なのかしら?」そんな疑問をオーストラリアの友人に聞いて見ても、誰も答えられませんでした。

真夏のクリスマス

オーストラリアでも、クリスマスは欠かすことのできない大きなギフトイベントです。12月に入ると街にはクリスマスキャロルが流れ、ギフトショッピングに精を出す人たちでごった返します。ただし、すべてが夏仕様。あちらこちらで見かけるクリスマスツリーは、赤や金の暖色系ではなく、青が基調のオーナメントで涼しげな印象を与えます。サンタクロースも半ズボンを着用していたり、ビーチでサーフィンしていたり。ソリを引く動物も北極圏や亜寒帯に生息するトナカイではなく、オーストラリアの人気者、カンガルーなのです。

子どもたちがクリスマスプレゼントを心待ちにしているのはほかの国々と同じですが、大きく違うのは、ギフトを運ぶのはサンタクロースではないということ。子どもたちは、親や親戚が愛を込めてプレゼントしてくれることを幼いときから知っています。また、クリスマスディナーは室内でのテーブルメニューではなく、「バービー(Barbie)」と呼ばれる屋外BBQが主流です。ちなみに、自分たちを「オージー」とも呼ぶオーストラリア人は、BBQを「バービー」、クリスマスプレゼントを「クリッシー・プリッシーズ(Chrissie Pressies)」と略します。こんなところにも、堅苦しさを嫌うオージー気質が表れていますね。

Q. ギフト文化の特徴は?

オーストラリアのスーパーマーケットやブックストアのカウンター近くで大きな顔をしているのは、カードコーナーです。誕生日、結婚、出産、引っ越しなどのイベントはもとより、「友情に感謝」「大好きなパートナーに」など、日々使えるカードが勢揃い。色やデザインが豊富で、選ぶだけでも楽しくなります。

人とのつながりを大切にするオーストラリア人にとって、気持ちを伝えるメッセージカードは必須。いくらメールやSNSが便利でも、彼らは今でも手書きのカードを好みます。すなわち、ギフトだけ贈ることは心が込もっていないと見なされてしまいます。ギフトが手渡される瞬間、まずは添えられたカードが読まれ、ひとしきり感動の声が上がってから、プレゼントに移ります。たとえ遠くに住んでいて会えなくても、メッセージカードだけは届けるのが友情の証。それだけメッセージカードの存在は大きいのです。

そういえば、オーストラリア人の友人からこんなバースデープレゼントが届きましたっけ。ぐしゃぐしゃになった包装紙の中から顔を出したのは、1冊のペーパーバック(文庫本のようなソフトカバーの本)。タイトルは、おぼろげな記憶ながら『My Favorite 1000 ~私の好きな1000~』 といったものでした。雨上がりの匂い、眠そうなクロネコ、焼きたてのパン......など、作者が好きなモノやコトが1から1000まで列記されています。ところが、よくよく表紙のタイトルを見ると1000の最後の0に斜線が引いてあり、1に変わっています。そしてカードの挟んである最後のページを開くと、なんといちばん最後に「Machiko」と太いボールペンで書かれていました。メッセージカードには "I always miss you! with lots of love(いつも思ってますよ! たくさんの愛を込めて)" とありました。これほど心を動かされたメッセージはありません。

Q. ギフト選びのポイントは?

カードのエピソードからもわかるように、オーストラリアでは、誕生日や記念日ギフトでは心の込もったものが何よりも喜ばれます。一方、パーティーなどに持参する手土産には、"BYO(Bring Your Own)" といって、自分の食べたいものを持って行けばOK 。とはいえ、パーティーのほとんどがバービーなので、焼くための材料、特にビーフやマトン、ソーセージなどの肉類を持参するといいでしょう。

ちなみに、最近はレストランでもBYOのところがあります。好きなボトル、つまり「ワインの持ち込み可」の意味です。昨今、日本でもBYOのレストランが増えてきましたよね。このシステム、大歓迎です!

Q. 気をつけたいギフトのマナー&タブーは?

オーストラリアには、ギフトにおけるこれといったタブーはありません。ただ、ムスリム(イスラム教徒)やヒンドゥー教徒、ユダヤ教徒など、文化圏の異なる人も暮らしていますから、相手の文化圏には気を配るようにしましょう。それぞれの文化圏のタブーについては、このコラムの各国編を参照してくださいね。

Q. ラッピングはどうしたらいい?

"DIY(Do It Yourself)" が当たり前のオーストラリアでは、ラッピングももちろん自分でします。カードコーナーに隣接しているラッピング売り場には、シーズンイベントに合わせた彩り鮮やかなペーパーやリボンがたくさん。贈る相手を思い描いて選んでいる人たちの顔も、嬉々としています。しかし、残念ながらこの美しいペーパーがひとたびギフトラッピングに使われると、途端にシワクチャになってしまうのです。欧米やアジアの一部の国々と同様、不器用体質(失礼!)なのでしょうか......。つまり、自分たちでラッピングするものの、決してうまくできない、というわけ。「日本人のあのラッピングテクニックを習いたい」なんて言われることもありますが、私もその実、日本的ではございません。ラッピングに関しては極めてグローバルなのです(笑)。

Q. 最近のギフトトレンドは?

クリスマスパーティーなどで楽しまれるギフト交換の方法として、オーストラリアにも「クリス・クリングル(Kris Kringle)」というのがあります。パーティーの参加者たちがあらかじめ決められた予算でプレゼントを用意し、くじによって各人一つずつ取っていくというもの。【フィリピン編】の「マニート・マニータ(Manito Manita)」、【シンガポール編】の「シークレットサンタ」、【スペイン編】の「アミーゴ・インビジブレ(Aimgo Invisible)」を彷彿とさせますね。各国で呼称は異なりますし、ルールも多少違いますが、似たようなギフト交換システムがもてはやされているようです。

石橋眞知子

石橋眞知子Machiko Ishibashi

学習院大学卒業。在学中よりラジオパーソナリティやテレビレポーターとして活躍。その後、アメリカ・ノースウエスタン大学で日本語教師をし、イギリス・オックスフォード大学で美術史や演劇を学ぶ。以来、異文化コミュニケーションやマナーのレクチャー、企業のコンサルテーションなど幅広く活動。英会話に関する著書多数。2006年には「プロトコールの基本」(日本ホテル教育センター)の監修プロデュースを手がけた。2015年に日本クロスカルチュラルコミュニケーション協会を設立し、現在会長を務める。